早期発達支援のあるべき姿──2歳3か月で相談されたお母さんの声

保護者の声

今回は、「保護者の声」シリーズの2回目です。

前回の記事はこちら。
👉 “様子見でいいのか”と考え続けた日々——1歳8ヵ月で相談されたお母さんの声

このシリーズでは、私の教育相談を受けてくださった親御さんの「リアル」をお届けしています。
その目的は、我が子の発達や行動について深く悩んでいるお母さんに、
自分の経験をふまえて、優しくアドバイスをしてあげてほしい──そんな願いから始めたものです。

どんな悩みがあったのか、どこに相談したのか、そこでどんなことを言われたのか、何を考えたか、そしてどう行動を起こしたのか。
それを、お母さんご自身の言葉でお伝えします。


1歳半で感じた「発達の違和感」

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一歳半頃に初めて息子の発達に違和感を感じました。

具体的には、言葉が全く出ていない、こちらの言うことを全くわかっていない(簡単な指示が通らないなど)、指さしやバイバイなどの身振りをしない、順番が待てない、耳塞ぎをする、チャイルドシートやベビーカーでいつまでも泣き続ける…などなどです。


ちょうど1歳半健診の頃ですね。
この時期の「違和感」は、とても大切なサインです。

そのきっかけは、周囲のお子さんやきょうだいと比べて「ん?あれ…?」と感じる行動が、何かしら現れていることが多いように思います。
私の教育相談を受けられる親御さんで、「2歳まで何も心配ありませんでした」という方は、これまでに一人もいません。


違和感をそのままにしなかった

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保健センターからは「2 歳半まで様子をみましょう」と言われましたが、待っていられずに 自分で専門医を受診しました。 診断こそされませんでしたが、早期療育をすることが望ましいとアドバイスされ、療育先を探していたときに水流先生のホームページにたどり着きました。


はい、お決まりの「様子をみましょう」です。いつもこのパターンです。
この問題点については、以前こちらの記事でまとめています。

👉 専門家の「様子見でいいですよ」は本当?支援が遅れる前に知っておきたいこと

>待っていられずに自分で専門医を受診しました。

さらりと書かれていますが、この一歩が、お子さんとご家族にとって大きな分かれ道になりました。
その結果、専門医から「早期療育をすることが望ましい」という適切な助言を受け、実際に支援へとつながっていきます。

ここまでの動きだけでも、「お手本」と言い切ることができます。


悩みの根本への対応

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親としては、発語が全くないことだけが問題で、それが解決されればほかの問題も付随して解決していくものだと思っていました。

しかしそうではなく、息子の癇癪や泣きに周りの大人(主に両親)が付き合っていることが大問題で、これを正さないといつまでも言葉は出ないと教えていただきました。


このあたりも、お母さんはさらりと書かれていますが、
実際の教育相談では、言葉を選び、時間をかけて丁寧にお伝えします。

ときには、過去のクライアントの動画や映像資料も交えて説明しながら、
「なぜこの子は言葉が出にくいのか」「その背景にどんな習慣があるのか」を一緒に整理していきます。

言葉の遅れがご家族にとって大きな悩みであることは、私も重々承知しています。
それでも、悩みの根本にある原因について、教育相談の中でしっかりとお伝えする必要があるのです。
これは、ちょっとしたアドバイスだけで改善できるようなものではありません。


支援の展開(発語、トイレ、暴力、手つなぎ、幼稚園での対応)

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当時は息子がどうして泣いてるかを考え、泣き止ませるためにあれやこれやと四苦八苦していました。まずは泣きに応じないことを徹底し、発語のための日々の練習方法、切り替えの練習、トイレトレーニング、暴力への対応、手つなぎ練習、幼稚園での対応方法等を主としてご相談させていただきました。


>まずは泣きに応じないことを徹底し、

この一文も、文面だけでは本質が伝わりにくい部分です。
実際には、ご家庭にうかがって日常の様子を見せていただきながら、

  • お母さんの立ち位置や動き
  • 声をかけるべきタイミング
  • 「泣きに応じない」と「無視」との違いについて

など、一つひとつを、お手本として目の前で見せながら具体的に説明することで、ようやく成立する支援です。

経験の浅い支援者や、表面的にしか支援を見ていない方は、
この文面だけを読んで「子どもがかわいそう」「それは愛情不足なのでは?」と言うかもしれません。

けれど、困難なケースをいくつも経験してきた方であれば、
この“泣きへの応じ方を変える”という対応がどれほど繊細で高度な仕事かを理解されるはずです。

こうした土台が整って、はじめて
発語・切り替え・トイレトレーニングなどの支援が展開されていきます。


成長の記録と、その背景にある努力

👩
水流先生に初めてご相談をしたときには発語0だった息子が、今は歌を唄い、絵本を音読し、トイレは自分の意思で行き、毎日楽しく幼稚園に通っています。

定型発達の 4 歳児に比べたらとてもゆっくりではありますが、息子の口から言葉を聞ける日が来るのだろうか?と思っていた 2 歳のときからは、想像がつかないくらい成長しました。


この結果は、間違いなく親御さんの努力の賜物です。
ブログでは到底書ききれないほどの過程と苦労があったことを、私は知っています。

世の中にはよく、こういう声があります。

「通っている幼稚園や学校で、必要な支援が受けられなかった」
「もっと我が子に合った関わりや配慮をしてほしかった」

確かに、そう思わざるを得ないような場面もあるかもしれません。
けれど今回のお母さんが直面したのは、そういった“支援不足”ではありません。

戦ってきたのは、通園先からの差別、いじめ、侮辱――
おそらく「本当にそんなことがあるんですか?」と耳を疑いたくなるような出来事の数々です。

そんな中で、「毎日楽しく幼稚園に通っています」と言い切れるまでになった。
その背景には、どれほどの覚悟と努力があったか。
私は、それを近くで見てきました。


最後に──お母さんからの言葉

最後に、親御さんから寄せられた言葉を、そのままご紹介します。
同じように悩みを抱える方に、まっすぐ届いてほしい。
そんな思いで、丁寧に綴られた文章です。


👩
自分自身の経験から言って、我が子の発達に問題があるということはなかなか受け入れ難いことだと思います。私は今でも、いつか息子が劇的に成長するのではないか…という希望が頭の片隅から消えることはありません。

しかし、息子が何か(例えばトイレでの排泄、着替えのスキル、数字の理解等…)を習得するためには、長期的な学習を必要としていることが現実です。 たとえ発達障害の診断がなかったとしても、息子が人間社会で生きていくためには、親子で人の何倍もの努力を続けていかなければならないと思っています。

診断がついていないから…、我が子に障害があるわけがない!まだ小さいからこれから急成長するはずだし!という思いは私も持っていましたので、とても良く分かります。

しかしその気持ちを最優先して月日が流れるのを待つだけでは、お子さんの貴重な幼少期の時間を無駄にしてしまうことになります。 発達障害の診断の有無などは関係なく、我が子の発達や行動に不安を感じているならば、 早い段階でそれに向き合うことは非常に重要なことだと思います。

少しでもお子さんの発達や行動に不安があるならば、一日でも早く信頼できる専門家にご相談されることを強くお勧めします。


おわりに

親御さんに今回の執筆をお願いしたとき、
何度も手直しや差し替えを繰り返されていました。
数多くある相談・支援機関に対する率直な思いをグッとこらえ、ようやく今回の文章にまとまりました。

今、あらためて振り返ってみても、やはりこのお母さんは強かったです。
知性や柔軟性もさることながら、何よりも我慢強く、決して泣き言を言わなかったです。
どれだけ厳しいことがあっても、それを受け止める力がありました。

誰もがこの親御さんのように振舞えるわけではありません。
ですが、こうしたお母さんの姿勢から学べることは、きっと多くあるはずです。


お母さんからいただいた全文はこちらから
👉 保護者の声

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