今回のテーマは「強度行動障害」です
教育相談の中で、この「強度行動障害」について取り上げることは少なくありません。
まずは、「強度行動障害」について解説しているウェブページをいくつかご紹介します:
強度行動障害と判定されるのは、思春期や青年期、それ以降の場合が多いと思われます。しかし、元をたどれば、幼少期の段階でそのベースがつくられていることも多く、決して他人事ではありません。
言葉の遅れよりも、優先すべき支援がある
幼児期の教育相談において、親御さんが最も心配されるのは「言葉の遅れ」です。もちろん、それ自体は重要なテーマですし、どうやってコミュニケーションに関する行動を獲得させるか、練習していくかはとても大切です。それに対する親御さんのニーズも非常に高いです。
しかし、言葉の支援以上に重要なのが、「強度行動障害の予防」です。
むしろ最優先で取り組むべき課題だと私は考えています。
なぜ、そこまで重要なのでしょうか?
たとえば、3歳の子どもが親を叩いたり引っかいたりすることが頻繁にあるとします。これを支援者が「他害・暴力」と表現すると、多くの親御さんは「何を大げさな……」と受け流すかもしれませんし、「子どもだからそれくらいあるだろ!」と不快に思う方もいらっしゃいます。
確かに、この時期の子どもの手は“小さなもみじ”です。他人に大けがをさせたり、深刻な傷を負わせたりするわけではないでしょう。
しかし、その子は1年間で7センチ近く成長します。
そして、家庭で出ていた行動パターンは、園や地域社会といった家庭以外の場面でもきっと現れてくるのです。
- 幼稚園に入園し
- お友達との関わりが増え
- 大人の目が届かない時間も出てくる中で
気づけば「叩く」「引っかく」といった行動がエスカレートし、やがて「大暴れ」へとつながる——そんなケースも決して珍しくありません。
子どもが本気で暴れれば、もはや親御さんや先生では止められなくなります。
思春期や青年期に、ある日突然激しい行動が現れるわけではないのです。
予防という視点
この話題において、もっとも大切なのは 「予防」 という視点です。
教育相談を続ける中で、私自身が「ここだけは譲れない」と思っている信念があります。
それは、
幼児期の教育相談の一番の目標は、将来、強度行動障害の状態にならないように予防すること
ということです。
たとえ家族の中であっても、人を傷つける行動は容認できません。
また、他人を巻き込んで自分のこだわりを押し通そうとする行動もNGです。
- リビングでくつろぐ権利は、家族みんなにあります
- 夜間は、誰もが静かに眠れる環境が必要です
仮に言葉が出るようになっても、これらの生活習慣が確立していなければ、家族全体の生活の質は守れません。
厳しいと思われるかもしれませんが…
残念ながら、こうしたお話をしても、「そんなことはどうでもいいので……」と耳を貸してくださらないご家庭もあります。
そのような場合、たとえ相談の途中であっても、教育相談をお断りすることがあります。
(もちろん、行動が悪化する可能性や生活が大変になることは事前にお伝えしています)
長年相談業を続けていると、契約解除となったクライアントの「その後」を耳にすることがあります。
その多くは、望ましくない状況に陥ってしまい、再度相談を希望されることもあります。
ですが、
一度支援をお断りしたケースについては、再相談もお引き受けしていません。
幼少期の支援が将来を変える
幼少期から予防を念頭に支援を行えば、
他害や自傷、強いこだわり、睡眠の問題など——
将来的な行動障害の芽を、未然に摘むことができます。
私はこれまで、以下のような提案を行ってきました:
- 家族が穏やかに生活できるための過ごし方
- 現実的な生活スタイル
- ご家庭で実践可能な練習方法
そして、支援がうまくいく鍵はこの2つです:
① 早期の支援であること
② 目の前の問題を、将来の強度行動障害につながる可能性として“予防的に捉えること”
家族の未来を守るために
強度行動障害の予防と早期介入の重要性を知っていただくことは、
そのご家族の「これから」を左右するほどの大切なテーマです。
もちろん、言語発達支援や生活スキルの獲得といった当面の課題にも丁寧に取り組みます。
しかし、5年後、10年後、さらにはその先の未来を見据えてこそ、
本当の意味での支援が可能になると私は信じています。
当相談室では、「乱暴な行動がある」「かんしゃくが激しい」といったご相談に対しても、親御さんの関わり方や日々の過ごし方について、分かりやすく説明します。
ぜひ、ホームページもご覧ください。