「相談はお気軽に」は、ありえない
我が子のことで専門家に相談しようと決意したとき、親御さんの心の中はとても複雑です。
「遅れがあるって言われたらどうしよう」
「まだ〇歳だし、心配しすぎかもしれない」
「明らかに周りの子より遅れている。でも認めたくない」
「相談とか、療育とか……正直、怖い」
「私の子育てが悪いってこと?」
これは、私が親御さんから直接うかがった言葉です。
ただし、こうした本音が出てくるのは、初回相談のときではありません。
だいぶ後になってから、「実はあのとき……」と、振り返って教えてくださったことばかりです。
「相談はお気軽に」なんてフレーズ、よく見かけますが――。
そんなふうには、とても思えないのが現実です。
私もプレッシャーを感じています
こうした親御さんの心中は、私も重々承知しています。
だからこそ、私自身も――とくに初回の相談は、いつも緊張します。
個人事業としてこの仕事を始めて、もう10年になります。
それでも、この緊張はまったく変わりません。
親御さんの深い悩みに耳を傾けたあと、
その場で支援の方向性や、必要な手立てをお伝えしなければならない。
当然ながら、大きなプレッシャーを感じます。
トラブル時に求められるのは、「具体的なアドバイス」
と、ここで、ひとつたとえ話をさせてください。
海の真ん中で、船にトラブルが起きてしまいました。
乗組員たちは救命胴衣を着けて、必死に助けを求めています。
船は動かず、どの方向へ向かえばいいのかもわからない――そんなとき、ようやく無線がつながり、管制官と連絡が取れるようになりました。
このとき、いちばん助かるのは、こんなアドバイスです。
「まず、ここを修理してください」
「近くの安全な島まで、あと〇キロメートルです」
「進むべき方角は、こちらです」
「食料は〇日分、確保しておいてください」
あるいは、
「自分では助けられないけれど、海上保安庁に連絡しました」
というような対応もあるでしょう。
でも、こんなふうに言われたらどうでしょう?
「とりあえず、しばらく様子を見てください」
いやいや、ちょっと待ってくれ――。
こっちは今にも沈没するかもしれないんだ。
どんな行動をとればいいのか、どこに向かえばいいのか。
具体的な指示や、有益な情報がほしいと思うはずです。
「様子を見ましょう」の正体
ですが――。
療育支援や発達相談の分野では、「様子を見ましょう」と言われることが、むしろよくあります。
しかも、この言い方にはいくつかのバリエーションがあります。
たとえば、
「成長を信じて待ちましょう」と、やさしげな言葉に置き換えるパターン。
「〇歳までは、もう少し様子を見ましょう」と、先送りにするパターン。
「男の子は言葉が遅いのよ」など、はっきりした根拠がよく分からないまま、納得させようとするパターン――。
言い回しこそ違えど、結局どれも意味するところは同じです。
――「どうすればよいかわからない」
――「役に立つ情報を持っていない」
ということです。
ただ、立場上の理由なのか、プライドなのかは分かりません。
“専門家である自分がわからない”とは言えないので、「様子を見てください」という――どこか苦し紛れのような言葉に、置き換えられてしまうのです。
“専門家”という肩書がありながら、具体的な支援策や情報を伝えられない。
それは本来、致命的な問題であるはずです。
けれど、残念ながら――そういう現実が、いまも存在しています。
本当に必要なのは、“人を見抜く目”
賢い親御さんであれば、相手の話しぶりから、うすうす気づかれます。
「この人、力不足なんだろうな……」
「もしかして、不勉強な方だったのかも……」
そんなふうに、見抜いてしまうのです。
でも、もちろん、すべての親御さんがそうとは限りません。
「専門家がそう言うのなら、今は動かなくても大丈夫なのかな……」
そう思ってしまう方も、決して少なくないですし、無理もありません。
その結果、支援が遅れてしまう。
子どもの不適切な行動が増えてしまう。
それは――とても罪作りなことです。
まとめ
この記事を書いた理由――
それは、子どもの発達に不安を感じている親御さんに、“人を見抜く目”を持っていただきたいと思ったからです。
もし、専門家と話す機会があったら、ぜひこう聞いてみてください。
「何か、アドバイスをいただけますか?」
「私は、子どもにどう関わればよいですか?」
「どこに相談すればいいですか?」
大切なのは、“具体的な答え”が返ってくるかどうかです。
“そのうち話すようになりますよ”ではなく、“〇〇という支援機関を紹介します。そこの●●先生は…”のような返答があるかどうかが大切です。
――さっきの海の話、思い出してくださいね。
我が子にとっても、家族にとっても、
幼少期に効果的な支援を受けられるかどうかは、その後の人生を左右します。
この記事を読んでくださっているあなたが、
信頼できる支援者に出会えることを、心から願っています。
ご相談は、こちらからどうぞ
「うちの子、ちょっと気になるかも……」
その違和感を、どうか無視しないでください。
これまで多くの親御さんが、誰にも言えずに時間を過ごしてきました。
けれど、本当に大切なのは、「今、どう動けるか」です。
当相談室では、一人ひとりの状況に応じて、具体的な支援の方向性を一緒に考えています。
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